「火山の国日本の箱根シンポジウム」

趣意書

箱根火山は、日本を代表する大型の活火山であり、50万年にもわたる長く複雑な
噴火の歴史をもっています。しかし、幸いなことに最近の火山活動はおおむね穏やか
であり、太古の噴火がもたらした美しい景観と、地下のマグマの熱がもたらす豊かな
温泉によって、箱根火山とその周辺地域は国際的な観光地として古くから繁栄してき
ました。

 箱根町では、日本火山学会と協力して、火山としての箱根の生い立ちや恵みについ
ての総合的解説書「箱根火山」を1971年に出版しました。また、1972年には箱根町立
大涌谷自然科学館を開設し、1981年には国際火山学・地球内部化学会(IAVCEI)を誘
致するなど、火山研究の促進ならびに火山と共生する文化の育成を見据えたまちづく
りを行ってきました。

 箱根町立大涌谷自然科学館は、箱根を訪れる一般市民が箱根火山の形成や箱根の
自然について現場での学習ができる施設であり、開設以来30年間にわたって国内外
の700万人以上の来館者に対し、自然体験教育の学習資料を提供してきました。また、
火山の現場にある博物館として、火山災害についての普及・啓発ではもちろん、火山
活動の観測・研究拠点の一つとしての機能も維持し、日本を代表する火山博物館とし
て国内的にも国際的にも大きな役割を果たしてきました。

 しかし、残念なことに大涌谷自然科学館は、建物の老朽化などの理由によって、今
年度いっぱいで閉館することが決定されています。その一方で、2001年夏には箱根火
山の地下で一時的にマグマ活動が活発化する事件があり、今年度から箱根町が箱根
火山のハザードマップ検討委員会を立ち上げるなど、地元住民の火山への関心が高ま
っています。

 このような状況を鑑み、本委員会では箱根火山の最近の火山研究や防災に関する成
果や、箱根町立大涌谷自然科学館がこれまで果たしてきた役割をどう継承するかとい
う問題も含めた火山教育・研究のあり方、火山との共生を目指したまちづくりなどを
テーマに、下記のようなスケジュールで「火山の国日本の箱根シンポジウム」の開催
を企画しました。

 

 このシンポジウムの内容については、以下に示します。14日はシンポジウムを行い、
箱根火山の地質見学会は15日に行います。


「火山の国日本の箱根シンポジウム」

日時 12月14日(土)午後1時〜午後4時30分
会場 箱根町立仙石原公民館(仙石原文化センター)講堂

主催:箱根火山シンポジウム企画実行委員会
共催:日本地質学会・日本火山学会・全国火山系博物館連絡協議会
独立行政法人 産業技術総合研究所
後援:神奈川県・箱根町・日本第四紀学会・地学団体研究会・日本地震学会
神奈川新聞社

第一部「箱根火山をもっと知ろう」

1. 箱根火山はどのようにしてできたかー最近の考え方ー
:高橋正樹(日本大学)
2. 箱根火山最新期の活動ー神山・大湧谷・芦ノ湖の生い立ちー
:小林淳(ダイヤコンサルタント環境防災事業部)
3.2001年の箱根群発地震と地殻変動ー生きている箱根火山ー
   :代田寧(神奈川県温泉地学研究所)

第二部 「火山と人間の共存」 パネルディスカッション形式

 コーディネーター:伊藤和明(元NHK解説員・全国火山系博物館連絡協議会代表)
 パネラー:袴田和夫(大涌谷自然科学館館長)
小山真人(静岡大学教育学部)
三松三朗(三松正夫記念館館長)
池辺伸一郎(阿蘇火山博物館館長)


第三部 「箱根火山を見よう」(地質見学会)

箱根火山をバスを使って実際に見学します。

日時   12月15日(日)午前9時〜午後4時30分
集合・解散 箱根町立仙石原公民館(仙石原文化センター)
参加費 3000円(バス代・保険料)
案内者  小林 淳(ダイヤコンサルタント環境防災事業部)

9:00集合 9:10出発 仙石原文化センター
9:20  9:35 @長尾峠北東 古期外輪山の地質断面の観察
9:45 10:00 A長尾峠(もしくは長尾峠南)
神山・冠ヶ岳の遠望と仙石原・芦ノ湖のできかたの解説
10:15 10:50 B湖尻峠(峠より徒歩)
ローム層中に挟まる富士火山のスコリアと神山起源の火砕流堆積物の観察
11:05 11:20 C 山伏峠
駒ヶ岳・二子山の遠望と各火山体の解説
11:40 12:30 D大観山
古期外輪山・新期外輪山・中央火口丘の地形的特徴とそのできかたの解説
13:00 13:45 E芦之湯
中央火口丘起源の降下軽石と火砕流堆積物,その特徴の観察
14:30 15:30 F姥子-大涌谷遊歩道(徒歩)
3000年前より若い時代の水蒸気爆発堆積物の産状観察
15:40 16:15 G大涌谷
現在の噴気孔(火山ガス)と2001年異常の痕跡の観察
16:45 解散 仙石原文化センター

注)歩きやすい・汚れても良い服装・靴。荷物はリュックサックで背負うように
するのがよい。冬であること,標高の高い場所を移動することから,服装には
特に注意が必要。


1 委員会メンバー:高橋正樹(委員長)・伊藤和明・三松三朗・柴 正博・阿部国広・
会田信行・池辺伸一郎・佐藤 公・小山真人・小林 淳・先山 徹・赤羽久忠・三田直樹・
平田大二

2 シンポジウム参加費は無料、ただしシンポジウム資料集は1冊500円で頒布

3 会場の箱根町立仙石原公民館(仙石原文化センター) TEL:046-4-8387
  @小田原から箱根登山鉄道バス(50分)で仙石原文化センター下車
  A新宿から小田急バス(2時間10分)で仙石原文化センター下車
  B自家用車では御殿場または小田原から国道138号線で仙石原交差点で仙石原
・湖尻方向に入ってすぐ早川を渡りますので、その右側にあります。


シンポジウムに参加されたJFG(全日本通訳案内業者連盟) のホームページ
シンポジウム・見学会の様子が紹介されています。


箱根火山と大涌谷自然科学館の果たしてきた役割