熊本日日新聞(2004.1.21)

阿蘇中岳 土砂噴でマグマ由来の火山灰確認  

阿蘇中岳第一火口で十四日起きた土砂噴の際、マグマに直接由来するガラス質の火山
灰が噴出していたことが、阿蘇火山博物館(阿蘇郡阿蘇町)などの調査で二十日まで
に確認された。ガラス質の火山灰は、昨年七月の土砂噴の際にも見つかっている。
研究者らは「マグマが地表近くまで上がってきた状態が依然続いている」と警戒を強めている。

 火山灰の調査を行ったのは同博物館の池辺伸一郎館長と、独立法人森林総合研究所
(熊本市)の宮縁育夫主任研究官。十五日に中岳の東から東南方向に雪の上に薄く積
もっているのを見つけた。池辺館長らは三十八カ所で二十センチ×二十センチの広さで
雪ごと採集し、その量を測定した。また、渡辺一徳熊本大教授が火山灰を分析した。

 その結果、火山灰は約八キロ離れた高森町上色見まで、最大幅一・五キロで降って
いることを確認。火山灰の総量は百二十七トンと計算された。また、火山灰を詳細に
調べたところ、大きさが〇・一〜〇・五ミリの透明なガラス質の火山灰が混じっていることも分かった。

 ガラス質の火山灰は引きちぎれたようになっており、マグマから出たばかりの“新
鮮な火山灰”であることが分かった。同様の火山灰は昨年七月十日の土砂噴の際にも
確認されており、依然、火山活動が活発な状態にあることを示している。

 土砂噴はこれまで火口底に積もった土砂を、ガスが吹き飛ばしたものと考えられて
いた。しかし、続いてガラス質の火山灰が確認されたことで、土砂噴もマグマが直接
関与した現象として警戒する必要があるという。

 渡辺教授は「ガラス質の火山灰が増える傾向にあるかどうかは、今回の調査では分
からなかった。しかし、湯だまりが次第に小さくなっていることなどを考え合わせる
と、火山活動は高いレベルを維持しているとみられる。阿蘇は噴火の予測が難しいだ
けに、今後も注意深く見守りたい」と話している。

阿蘇火山博物館の存続に向けて