ペルー日記(2001年12月)

12月19日

今日は一足早いクリスマス会と、野口学園小学6年生の卒業式です。

11月後半から怒涛のように行事が続いており、暑さも日々増し、慌しい熱気に満ち
た毎日で、何だか「卒業?」という感じで今日まで来てしまいました。

卒業式のため、白いドレスに身を包んだ少女達は、初めて目にするような大人びた美
しさで、まだ子供っぽさの抜けない男の子達とは対照的なのがおかしかったです。そ
れでも男の子達も、きちんと白いシャツにネクタイを締め、小さいながらも紳士では
あったのですが。

セレモニーは、中学5年生のエスコートで始まります。

青い角帽と青いマントに身をくるみ、小学生と中学生とが男女ペアになって、腕を組
んで入場します。各々向かい合って席に着くと、中学生がそれぞれ手に持ったロウソ
クに火を灯し、一人ずつ、小学生の元へとその火を運びます。

6年生たちは、絶やさぬように、その火を大事に受け取ります。

その後、一人一人名を呼ばれ、卒業証書と記念品、首飾りなどが、担任の先生と親御
さんから贈られます。どんな生徒だったか、どんなことが得意で、どんな夢を持って
いるか、その際に紹介されます。

中学生からも手紙とキスが贈られます。

そしてクライマックス。ホールの中心に卒業生達が集まりました。何をするのかと見
ていると・・・

「1、2、3(ウノ、ドス、トレス)!!」

一斉に帽子を天井高く投げ上げました。

晴れ晴れとした顔で子供達は次に、音楽に合わせてワルツを踊り始めました。

男の子と女の子がペアになると、男子の方がまだ背が小さくて、それでも照れながら
エスコートしています。女の子は余裕たっぷり。

踊りを合図にパーティの始まりです。

お母さん方が用意したご馳走が並べられたテーブルにつくと、青いマントは脱いで、
とっておきの白いドレスに衣装替えです。

ひとしきり食べた後はまた、ダンス、ダンス。。

一緒に修学旅行に行って、何度も何度も、お気に入りの歌を歌ってた子供達。

5200Mの氷河に登って、初めての雪遊びに興じた後、バスの中でみんな高山病で
ぐったりしてたこと。

旅の終わりには、少し大人びた顔で「さびしいね、さびしいね」と、笑ってたみん
な。

晴れ晴れと、巣立っていきました。

また、この日はクリスマス会もあり、先生方がふん装し、「白雪姫と7人の小人た
ち」を子供達の前で演じました。

2日前にいきなり台本を渡され、前日に衣装を指定され、こんな短い練習で大丈夫な
のだろうか・・と、気をもんだのも杞憂に終わり、それぞれに意を凝らした変装振り
に、子供達は大喜び。悪いリンゴ売りに白雪姫がだまされそうになると「ノ〜!!」
と大きな声で叫び、王子様が白雪姫を助ける場面では、やんやの拍手喝采でした。

ちなみに私は蝶々の役ながら、一言セリフをいただきました。。

クリスマスにはパネトンという、大きなパンケーキとチョコラーテ(ホット・チョコ
レート)を飲むのがペルー流。子供達にも、もちろん私達も甘いチョコラーテとパネ
トンのご相伴に預かりました。

真夏のクリスマス。汗をかきなら飲むチョコラーテもなかなか、かな。

12月20日

いよいよ今日は、野口学園の卒業・終了式です。

たくさんのお客様を迎えて、父母も集まり、様々なアトラクションをまじえながら、
終了式は進みました。

毎朝、朝礼のときに最年長の中学5年生が掲げて行進していた旗を、中学4年生に受
け渡します。青いシンボルカラーの校旗とペルー、そして日本の国旗です。それから
両国の国家、校歌を歌います。小さい子ほど元気に、手も振らんばかりに、力いっぱ
い、歌っています。

各学年の成績優秀者を表彰し、各学年ごとに歌や踊りを披露します。

フォルクローレのグループには、ボリビアで知合った有名なチャランゴ奏者の福田さ
んも飛び入り参加し、ケーナ、ギター、太鼓、チャランゴなどで、卒業生、音楽の先
生、在校生入り混じって、TUNTUNAとよばれる黒人音楽など、胸かきむしるような見事
な演奏を聴かせてくれました。

中学4年生は伝統的な衣装で、サヤとよばれるアレキパの踊りを披露しました。

肩や胸を激しく動かし、ステップも激しく、でも魅惑的で美しい踊りです。この日の
ために、ずっと放課後、踊りの先生と一緒に練習していました。でも、みんな本当
に、踊りが大好きみたいです。

先生方の出番もあります。

今日は「ビルヘン(聖処女)・マリア」のお話を寸劇で演じました。

なんと、その主役のビルヘンマリアに、なぜか私が抜擢されてしまったのです。。必
死でセリフを覚えたけれど、当日は校庭が会場だったので、マイクで司会者がすべて
セリフもあらすじも言ってくれたので、助かりました。

ストーリーは、働きもののマリアのところへ、天使が受胎を告げに来るところから始
まります。やがて身ごもったマリアは、夫ホセと共に旅路にあり、一夜の宿を探しま
すが、身なりの貧しさのため、誰も泊めてくれようとはしませんでした。ようやく導
かれて泊まったのは馬小屋でしたが、そこで産気づいたマリアは、男の子を出産しま
す。これが後の世のイエスキリストでした。

森の動物達や東方の賢者達がまず、贈り物を携え、聖なる子の顔を拝しに集まってき
ます。。。東方の三賢人の話は、実はこのとき、初めて知りました。

聖歌隊は白い衣をまとった、小学6年生たちです。

最後は会場を変えて、中学生の卒業式です。

昨日の小学生のような初々しさと、きらびやかさはなかったけれど、やっぱり、胸に
迫るものはあって、自分の卒業式以外で、こんなにも感傷的な気持ちになるのは、次
は我が子の卒業式だろうかと思ったり!?

微力ながらも1年、共に過ごし、学んできた彼ら。

思うようにコミュニケーションできずに、あきらめたり、ちょっとしたやりとりに嬉
しくなったり、一喜一憂してきました。

彼らはもう、自分の道へと一歩踏み出している。感傷なんかの手の届かないところ
に、その姿はありました。

再び教室で顔を見ることはもう、ないけれど。

共に過ごしたかけがえのない記憶だけ、ずっと心に残るのでしょうね。


ペルー日記